天然素材のメリット・デメリット

天然素材、自然素材は、「体に良い」「温かみがある」「気持ち良い」など、肉体的・精神的な負荷を軽減してくれます。
良いこと尽くめの様にも思いますが、メリットがある反面、デメリットもあります。天然素材のデメリットの多くは、生活してみないとわからないため、採用する前にきちんと理解しておきたいものです。

天然素材のメリット

肌触りがやさしく、見た目にも優しい

工場で生産された工業製品にはない、温かみや、肌に優しい感触があり、見た目も刺激的なものがなく、見るだけで癒されると感じる方もいます。材料のひとつひとつに全く同じ模様はなく、それぞれに個性が楽しめるのも良いところです。

有害物質をほとんど出さない

新建材を多用することによって引き起こされるシックハウス症候群や化学物質過敏症などの心配がありません。肉体的な負担が少ないですが、人によっては稀にアレルギー反応を示す場合もあります。こちらは、デメリットの方で紹介していきます。

断熱効果・調湿効果がある

断熱材のように、断熱専用に開発された建材の様な性能のものではなく、床板などの仕上げ材として使用した部分にその効果があります。鉄やコンクリートなどに比べると、冬場に素足で無垢材の床板触れても冷たく感じにくいことや、珪藻土の塗り壁には、小さい無数の空洞により、湿気の吸湿・放湿がおこなわれ、調湿効果を発揮してくれます。これは、無垢の床材でも同じで、梅雨時でも床が湿気でベタベタしないといった効果があります。現在は高気密な住宅が多く冬場は結露で悩まされます。しかし、天然素材が調湿をしてくれることで、結露を軽減することもできます。

廃棄する時には、自然に還すことができる

自然の中のものなので、そのまま雨ざらしにしておくだけで、微生物たちが分解して土に還してくれます。自然の中で育ったものが自然に還るだけですので、工業製品のように廃棄するときに環境に負担をかけることなく、処分をすることができます。また、無垢材は手入れをすれば再利用も可能で、新しい材料にはない味わいのあるものも多くあります。実は、古材を引き取ってメンテナンスをして販売をしてくれるところもあるほどです。

製品を作るときのエネルギー負荷が少ない

工業製品と比べると、製品化するときに使用するエネルギーは少ないです。自然界に存在しているときに形は出来上がっていますので、あとは加工をするだけで済みます。天然素材を採用することは、人に於いても優しいですが、地球にとっても負担を減らすことができるのです。

天然素材のデメリット

湿度によって伸び縮みし、変形することもある

特に無垢材においてですが、調湿効果があるということは湿気を吸収します。湿気が多い時には材料もたくさんの湿気を吸い込むことにより、伸びることがあります。その逆もあり、湿気を吐き出しすぎると縮むことがあります。また、その伸び縮みが繰り返されると、捻じれたり、繊維が追随しないときには割れが発生することがあります。これらは、メリットでありデメリットであると言えますので、天然素材は人間と同じで、動くものだ。と理解しておくことが大切なことですね。

メンテナンスに手間がかかることがある

一定の品質が確保されている工業製品とは異なり、メンテナンスを要する頻度は増えます。特にウッドデッキなどの外部に無垢材を使用した場合は、定期的に塗装をしないとカビや腐朽菌などに侵されてしまいます。また、施工当初よりも伸び縮みしたことにより、ドアが開閉しにくい、などといったこともあります。天然素材は生きているため、メンテナンスも定期的にしてあげることで長持ちしてくれます。多少の手間はかかりますが、手入れをすることで愛着が生まれ、大切に使い続けていくことにもつながります。

素材によって、品質や表情にムラがある

人間ひとりひとりの表情が違うように、天然素材もひとつひとつ違う個性があります。これは自然界に存在するものの宿命と言えるかもしれません。しかし、職人の目利きにより品質に問題のあるものは除外され、表情が違うものは、そのひとつひとつを見極め、どこに使用するべきなのか、適材適所で配置していきます。

アレルギーを発症する場合もある

無垢の木は良い香りがします。樹種によってはその香りがきついものもあります。これらの芳香成分には抗菌・防虫効果がある一方、人間に対しても反応を示すことがあります。食物それぞれに反応しない人とする人がいるように、木の芳香成分にも反応しない人とする人があります。「うるし」によってかぶれる人がいる、というのはわかりやすい例ですよね。しかし、材木によってアレルギーを発症される方はそれほど多くありません。
※ここで言うアレルギーとは、シックハウス症候群や化学物質過敏症とは異なります

カビや腐朽菌、虫害を受けることがある

廃棄したときに自然に還る、ことにつながるのですが、自然に還るためには、微生物や虫、菌類によって分解されることで土へと還元されます。ということは、虫や菌類は環境が整えば建物であっても、それらの自然の仕事をしてくれるわけです。しかし、この条件というのは、木材含水率が高含水率、常温多湿、酸素に触れる部分、などが揃ったときに起こります。裏を返せば、それらの対策をきちんと行えば、木であっても永く使い続けていくことが可能です。

昔は建物基礎杭にも木杭が使用されていましたが、土中の地下水面下にあった杭は、何十年経っていても腐っていなかった、なんてこともあったりします。

天然素材のデメリットを見ていると、メリットの延長上にあることが多く見えると思います。
自然界に存在しているものは表裏一体。
正しく理解して対策を行えば、良い部分を永く使い続けていくことにつながります。