材木の謎。

まいど。のやまです。

工事には欠かせない材木。その昔は『地産地消』が当たり前でしたが、今では輸入材が主流で山には木があふれかえっています。

ブランド材の国産材はいまでも流通されていますが、そうでない地方の材料は、商品になることが出来ません。商品にならないということは山に木が残されたままで、その山の環境や土壌までもが悪化してしまいます。

そんな材木のフシギを書いていきます。

 

『地産地消』って?

さてさて、『地産地消』この言葉を聞いてあなたはどんなイメージを持ちますか?

地域で採れた野菜を、その地域で食す。こんな風に思いませんか? そうですよね。 しかも、地元で育った野菜たちは美味!食べごろになってから収穫されて、鮮度もバツグン!ときには、朝採れ野菜。なんてのもありますよね。

しかし、ここでお話する『地産地消』は食べものでは無いのです。

家の骨格、お化粧材となる『材木』 え? 木って地産地消できるの?そうなんです。ですが、今の時代は気軽には出来なくなってしまったのです。
昔の昔は、今みたいに移動手段がなかったので、地元で伐られた木しか使えなかったのですが、今では、海外から安く輸入されて流通しているのです。
” こんなにも周りにたくさんの樹があるのに。 ”

 

なぜ、地元の木を使うことが出来ないのか?
理由はいたってシンプル。買うことができないから』
そう。流通していないのです。
日本の山は急斜面や谷が多く、山から樹を出そうと思うと、手間が掛かるのです。手間を掛けて出してきても、『売れない』『お金にならない』だから、山から樹を出さない。といった、悪循環に陥ってるワケなのです。
伊賀にはたくさんの山々、そして樹がたくさん生えているのに流通されずに、海外から安く輸入されている。これが現状なのです。
輸入材ではダメな理由。
「え??別にイイじゃん!」

いえいえ、なぜ地元の樹が使われず、海外のものを輸入していてはダメなのか。
食べ物に例えてみると、" 地元産 "のお野菜と" 中国産 "のお野菜。あなたでしたら、どちらを選びますか?

お家に使われる樹も実は同じなのです。海外で育った樹は、日本などへ売るために大量生産され、世界各地から輸入されています。
燃料用などを除いて、約70%も輸入材に頼っている状況です。
日本に届くまでに、これだけの距離を旅してくるのです。近ごろ、カーボンストックやカーボンオフセットなどが言われ木材を使って建物を造ることは環境に良い。という様な風潮になっているのですが、「いやいや、ちょっと待って。これだけの距離を運ぶのに、燃料めっちゃ使ってるやん!?」
地元の木を運べば、こんなに距離は掛からないですよね。
それに、海外で育ったものは日本の多雨多湿の環境には不向きなのです。
虫に食べられたり、反り、割れなどと、弊害もあります。昔では、日本の家は高温多湿の夏をしのぐために造られてあるため、床下の空間や、すき間風が入って自然と換気が出来る様な構造となっています。
いま日本の山は災害の種を持っている。
そして、もう一つ。
いま日本の山は災害の種を持っているのです。
(2017年7月 九州北部豪雨出典:日刊工業新聞
平成29年7月に九州北部を襲った豪雨災害。この時に土石流とともに大量の樹木が、流木となって麓に押し寄せ、家を押し流し復旧作業の妨げにもなりました。これは『自然災害』ですが実は『人災』と言えるのではないか?
(出典:西日本新聞社)
どうして、こんなことが起こるのか?

写真や映像を見ていると、根っこがついたままの樹や根っこがない樹があるのが見えませんか?根っこがついている樹は生えているまま、土と一緒に流されたもので、根っこががない樹はおそらく間伐材かな。

間伐材

一度は聞いたことがあると思います。野菜の間引きと同じ考え方。
(この写真は伊賀の山奥)

こんな感じで山も間引きをするのです。で、横たわっている樹たちが間伐をされたコたち。これらが大雨が降ると、雨水や土と一緒に流されてしまったのが九州北部豪雨での光景です。でも、こんな状況の山は日本中どこでも同じ。むしろ、定期的に間伐をされている
山は、まだ良い状況で、間伐すらままならない山もたくさん存在しています。
(これも伊賀の山奥)

間伐が行われないと、密集して育ち枝葉も広げられず、栄養分も少ししか吸収できないので、もやしの様にヒョロっとした樹に成長。ヒョロっとした樹の根っこは、ヒョロっと弱く細いものにしか成長しない。根の張りが弱いので、スポンジのようにあるはずの地中の保水力もなくなり、大雨が降ると地表の土と一緒に流れてしまったり、幹も細いので、大雪が降るとバキッと折れたりするのです。

適切に管理された森林は、土壌が雨水を貯えて自然のダムになるはずなのに、大雨で流されて木とともに土石流となってしまう。原因は他にも色々とあるけれど、本当に山を再生しようと思うと、何百年スパンでの計画と管理が必要になります。
まとめ
価格優先の輸入材を使って家づくりをするという選択ではなく、地元の樹が循環する仕組みを整えて、地域の山々の樹がその地域の家づくりの材木として使う選択が出来るように、ビルダーも住まい手も意識していかないと、これから先の未来にもっと山が荒廃して取り返しのつかないことになっていきます。
まずは、身近な地元の山の樹をつかって快適な住空間の確保と、元気な森を育てたいですね!